さて、9月にリリースされたSteinbergの新しいオーケストラ音源『Iconica Ensembles』
リリース時に記事を書いて、それから結局買ってはいないのですが、公式から体験版の配布が開始されたので早速入れて使ってみました!
ちょうど前回記事にした同じくらい安価なオーケストラ音源のUVI Orchestral Suiteなんかと比較しつつ、使い心地をレビューしていきたいと思います。
目次
まずはこちらをお聴きください
Orchestral Suiteの時にモンハンの『英雄の証』をカバーしたので、今回はそのデータの音源をIconica Ensemblesに差し替えてみました。
ちなみにこちらがOrchestral Suiteで作ったものです。
こうして同じ楽曲で聴き比べると一目瞭然(この場合一聴というべきかw)!当たり前ですけど全然違いますね!!
パッと聴いてOrchestral Suiteの方がすっきりとした音像で、Iconica Ensemblesの方が膨よかなことがお分りいただけるかと思います。
音のリアルさというよりはドライとウェットといったような、個人的にはそんな印象で、これがそれぞれのキャラクター特性になっている感じですね。
ちなみに今回も特に各トラックでのイコライジング処理などは行っておらず、マスターアウトでほんの少しローカットしているのと、マキシマイザーでの音圧調整を行なっているだけと、条件は前回と同じです。
またIconica Ensemblesは楽器の種類もあまり選べないため、内部でのPAN設定なども1トラック以外はデフォルトのまま何もいじらず、MIDI以外のオートメーションによる音量調節もなるべくしないようにしました。(そのせいでちょっとMIXバランスが悪くてすみません…)
あとハープの音源だけ入っていなかったので、そこだけはOrchestral Suiteのものを流用しています。
これ、原曲と聴き比べてどちらがより近いかってなかなか難しくないです?w
全体の出来でいうと楽器の種類の多さもあってOrchestral Suiteの方が発音の感じとか雰囲気は似てるんですけど、空気感や音の厚みに関してはIconica Ensemblesの方が勝ってるように聴こえるし、でも楽器の種類が少ない分、似てるってわけでもないし…
甲乙付け難いです!
Iconica Ensemblesの良いところ
ここからは実際に使ってみた感想とちょっとした使い方のご紹介を。
・安価な割に音が太くて生っぽい
これは上記でも聴いていただいた通り、立ち上げて鳴らした時の「おお…」感があります。
これが2~3万で手に入るというのは嬉しいですよね!
・クローズマイクとツリーマイクの調整が可能
これのおかげでドライとウェットの調整が物凄く簡単です。
デフォルトではどの楽器もクローズが-7dBとホールで聴いてる感を意識した設定になっています。ポップスなんかではクローズマイクオンリーとかにしても抜けてきそうで良いかもしれませんよね。
・どの楽器でもキースイッチが同じ
これはOrchestral Suiteとの違いとして感じたことでもあるのですが、Orchestral Suiteの場合、当たり前ですけど楽器によってキースイッチが決まっていて、それがC-1だったりC2だったりバラバラなんですが、Iconica Ensemblesは楽器によってスイッチの数は違うものの、基本的にはC-1からがキースイッチになっているので、どの音源を立ち上げても「この音源のキースイッチはどこだっけ?」と迷うことがないのはユーザーの使いやすさを考慮されている感じがしますね。
・レイヤー機能も含めたキースイッチのカスタマイズが可能でめちゃ簡単
そしてそのキースイッチ、カスタマイズがサクサクできます!
Iconica Ensemblesの特徴として、キースイッチにおけるアーティキュレーションを2つレイヤーとして重ねられる機能があるのですが、これが凄く便利で、スタッカートのあとにサスティーンさせてアタックの強いサスティーン音を得るみたいなことや、最大で8つまでスイッチを増やせるので、同じものでも設定値を変えたアーティキュレーションをいくつか用意して使い分けるみたいな使い方ができるのも良いと思います。
・ROUND ROBINの音源の多さ
同じ音が連続した場合に不自然さをなくすために同じ音のサンプルがランダムで入れ替わるROUND ROBIN機能。近年色々な音源でも採用されていますが、このIconica Ensemblesでは打楽器以外の音源において7つものサンプルが用意されています!多分これらのせいで45GBもあるんんだろうなぁという感じですねw
でもおかげで同じ音を連打してもめちゃくちゃ自然!
・モジュレーションホイールを使った滑らかなベロシティスイッチ
サスティーン系の音はデフォルトだとモジュレーションホイールにベロシティスイッチが割り当てられています。プリセットの初期値がゼロになっているので、最初「は?サスティーン音小っさ!」って焦りましたww
なのでベタ打ちして後からダイナミクスをつけられるのはめちゃ便利です!ホイールを使って記録すれば細かな歌い回しも表現できてしまうのは素晴らしいと思います。
もちろん通常のベロシティコントロールモードにも切り替えられるので、やりやすい方に合わせられるのも気が利いていますよね!
さすがこの現代に発売される音源だけあって、かなり痒いところに手の届いた仕様になっています!
Iconica Ensemblesのイマイチなところ
良いところばっかりじゃなくてちゃんと微妙なポイントも!
・プリセットの意味があまりない
楽器のプリセットは基本的にStrings High、Mid、Low、Fullみたいに分かれていて、それぞれにAccented Sustain、Accented Tremoroみたいなアーティキュレーション固定のプリセットがあるんですが、それだけ使ったり、そこだけトラックを分けるのは面倒ですし、そうじゃないEnsembleってプリセットでも自分でキースイッチのレイヤーを使えば同じことはできるので、それがわざわざ単品で用意してある意味がよくわかりませんでしたw分りやすいようにってことですかね?
あとHigh、Mid、Low、Fullっていうのもそれぞれで含まれる楽器数が変わるわけなんですけど、違いが絶妙すぎて使い分ける意味がほとんどないのもちょっと勿体無いですね。音のキャラクターが大きく変わってしまうのも混ぜた時に良くないとかがあるのかもしれないですけど、全部Fullを選択して音階分けて打ち込んじゃえば良いんじゃね?って気も…w
・楽器の種類が少ない
安価なのに45GBの大容量が売りではあるのですが、これは恐らくアーティキュレーションやベロシティスイッチ、ROUND ROBIN等に尽力しているせいで、音源の種類としてはあまり多くはありません。しかも吹奏楽器やストリングスは一応ソロでの扱いがないので、これだけで今回のようなオーケストラ音源を再現するには限界があるといった感じかもしれませんね。
まぁソロを使いたければIconica Section & Playersを買えということですw
でも一応と書いた通り複数鳴っていても一本のように聴こえるっぽいものもあるので、全然カバーできると思いました。
しいて言えばこのくらいかと!
ちなみに少し余談ですが、このIconica EnsemblesはHALion Sonic 3(SEでも可)で立ち上げるのですが、1つのHALionで15音源立ち上げて使ってみたら僕のMacBook Proだとプツプツでダメでした。
前回Orchestral Suiteの時もそうで、その時にいくつかに分けると良いという記事をみたので、今回はHALion Sonicを3台立ち上げて5音源ずつに分けてみたらめちゃくちゃスムーズに動作するようになりました!マルチティンバー音源もそういう使い方をした方が良いんですね~!勉強になるなぁ。
さいごに
ざっくり触った感じ、このような感じでした!
僕もまだ細部まで理解できていないので、もしかしたら何か間違った解釈があるかもしれませんが、そういう使用者のリアルさも含めてお伝えできていると幸いです。
これが定価だと3万円。発売時イントロプライスセールで2万円になっていたので、たまにその値段まで落ちるんだとすると…
良くないですか?!相変わらず胡散臭くてすみません…w
Orchestral Suiteだと少し音が軽すぎると思っていた方や、ポップス系の人でちょっとストリングスを入れたいみたいな使い方であれば十分な気がしました!
30日間のお試しもできますので、是非検討してみてください~!!